※学パロロスアル
※ほんのり輪廻転生



デルタ、溶けて、60°


 部長が描く三角形は、定規を使っているにも関わらずいつもどこかいびつだ。それを指摘して笑ってやれば、「良いんだよテストじゃないんだから!」とむきになって言い返される。
 三角形を、提出用課題の裏に増やしていく部長は楽しそうだ。大小様々な三角形が生み出されては、今日もいつ侵入したのか、小さな子供がピンク色の頭をふりながら色を塗る。少しずつ色彩豊かになっていく三角形に、課題のことはもうすっかり頭にないのだろう。濃いオレンジ色のサインペンに、色うつりに気付いた部長の顔を思い浮かべた。

 人は輪廻転生を信じるだろうか。あるいは、願うだろうか。
 誰が信じて誰が願ったのかは知らないが、俺と勇者さんとルキは再び出会った。三人ともそっくりそのまま記憶を保持していて、なーんだこれじゃあ前と何も変わらないな、という呑気な発言に心が落ち着いて、思わずそのすっからかんな頭を殴った。

「ここにボクがいて、ルキはここで、そしたらお前はここだな。」
 今も昔も、きっとこれからも変わることのない脳天気な声に視線をそちらへやると、三角形の各頂点にそらぞれの名前が記されていた。
「こうしたら次にどこに行っても、みんな繋がってられるだろ。」
 照れくさそうに、でも自信たっぷりに言う、今は同い年となった少年の頬をつねる。痛い痛いと上がる悲鳴をそのままに、ボールペンで彼と自分の名前を塗りつぶし、入れ替えた。
「俺が頂点です。」
 高圧的に言うと部長は呆れた顔をして、幼女は複雑そうな顔をした。こいつも昔と変わらない。昔から気付かなくて良いところにばかり気が付く奴だった。
 俺が頂点だと、そう言って辿り着いた場所は確かに頂点だった。30°、60°、90°の直角三角形の頂点。残り二つの点からはどちらも離された場所に俺はいた。だって、仕方がないじゃないですか。それが例え提出できなくなった課題の裏でのできごとでも、俺は貴方を一人にはできない。
 嫌だな、いつからこんなに女々しくなったのか。意外と最初からだったかも知れないな。くだらない、とせきをたち、数歩進んだところで斜め後ろから腕を引っ張られた。部長がにやにやと、左手で俺の手を掴んでいた。そのまま彼は右手でルキの手を取り、ルキには同じように右手で俺の手を取るように指示をする。
「これで大三角だな。元勇者と、元魔王と、それからボクは、元…元…ええっと、元も今もすごいやつ!そんな三人が集まって普通の三角じゃもったいないからな!」
 けらけらと笑う勇者さんに容赦のない蹴りを入れて、だからいびつだって言ってんですよと、繋がる手と手に笑ってしまった。



 きっと転がる正三角