見ていると思っていたら、見られてた、って、それすごく興奮しませんか? ジーニアス あの子供に目をつけたのは、正直失敗だったと言っても良いくらいである。 おもしろいもの何でも手を出しちゃうのは悪い癖だなぁ、と、デスクの上の書類を腕でなぎ倒して、冷めた目で窓の外を見た。 今日も新宿の街は昨日と変わらない。昨日の新宿は一昨日と、一昨日の新宿は先一昨日と変わらなくて、10年前の新宿と今の新宿とでは天と地ほども違いがある。 寒いのか暑いのか、空調が完璧に整った高級ビルの室内では下界の空気のことはわからない。出かける予定もないから良いんだけど、と思って椅子に深く座り直すと、勘の良すぎる助手が「だったら仕事をしてちょうだい。」と対して期待していない声で言った。 人を観察することが昔から好きだった。その人が何を考えて次にどのような反応を突き付けてくるのか、それを見るのが楽しかった。 自分の予想していない答えが返ってくれば驚いて、そんな考え方もあるのかと素直に感動しさえした。 おもしろくなくなってはいけないから、こちらから何か衝撃を加えてみることもあった。 でもたいていはやがてつまらなくなって、壊れていってしまった。そんなとき俺は高慢にも、「また駄目だったかぁ。」なんて呟いて、注いだオレンジジュースを飲み干すのだ。 飽きてからは拘る必要もなかったから、さよならと手を振って決して穏便ではない別れをした。でも俺は、いつでも去っていく側の人間であったし、それを疑うことはなかったから、俺に去られた人間の気持ちなんてどうでもよかった。簡単に言えば、興味はなかった。パッと手を離してあとは振りかえらない。俺は新しい物が好きなんだ。 たまに物わかりの良い振りをして、極めて大人な対応をとってくる奴もいた。俺のさようならの言葉に対して、楽しかったよ、と返す奴。それはそれでおもしろいのだけれども、やっぱりその奥が知りたくて「俺は全然楽しくなかったよ!」と笑って返してぶち壊した。 でも所詮、貴方はその程度の人間なんですよ。 僕に興味を持っていただけたことは至極光栄です。 ですが残念です、折原さん。僕は平穏が何よりも大事で、そして恥ずかしさを抑えて言わせていただければ、変化することが好きなんです。 人の奥底?楽しそうですね。でも、奥にあるものは奥にあるから良いんです。それを取りだして、自分から対象を壊して、まぁ、それも臨也さんらしくて僕は好きですけど、でもそうしたら作りかえられないじゃないですか。 僕は人に好かれることが嬉しいです。正臣や、園原さん、クラスの子たちはみんな大切だし、静雄さんだって悪い人じゃない。セルティさんや新羅さんも僕によくしてくれるし、臨也さんのことも好きですよ。 この先いつか僕が出会う人たちには是非僕の良さをわかって欲しいし、ついでに世界の美しさも知って欲しいです。 僕は折原さんが興味を持たなくなってしまったものもすべて平等におもしろいと思います。 むやみやたらと人を壊してまわるのはやめてくださいね。痛いのは嫌いだし、苦しいのも嫌です。できれば他の人にもそういう思いはしてほしくない。 僕は臨也さんが、人に興味をもって、その人のために色々な思考錯誤をして、挙句自分のせいで死期を早める姿を見ているのがとても、とても、とても! 愛してるんです臨也さん。僕はずっと、見ています。 |