What!?


 ルルルルル、と機械音が鳴る。

 着信音は設定していない。何故?は、恥ずかしいから。

 極めてなんでもない風を装ってパネルを触って、飛び出してきた声にひっくり返りそうになった。

「夏樹?うん、夏樹だね。夏樹、詳しくは聞かないで。とりあえずテレフォンセックスとやらをしよう。」

「はぁ!?」

 聞きなれた声が、彼からはおよそ聞きなれない単語を言い放った。

「夏樹は何もしなくて良いから。俺がちょっと思い出したいだけ。」

「えっ、ちょ、いやお前!」

「夏樹はいつも俺を中途半端に脱がすよね。上のシャツを捲りあげて、わざと乳首をかするんだ。」

「ぶつけるようにキスをして、口の中にあっつい舌をもぐらせてくる。最初に上顎に当てるでしょ、あれいつも少しくすぐったいんだよ。」

 淡々と紡ぎだされる情事のあれやこれや。

 一体何がどうしてこんなことになってしまったのか。冷静な電話口の声とは対照的に、息が詰まって熱くなるのを感じた。


 ―もうこんなに赤くなって。

 ―こっちも忘れるなよ。

 ―ユキ、咥えて。俺の咥えて。

 ―んっ、あ、あ、アアアアアッ…!

 ―やめてもう駄目、イきたくない!

 ―夏樹、夏樹。なつ、き!

 ―なつ、ん、やぁああああイっちゃう!!!


「どう?ストレス発散できた?」

 自分が江の島を出るときからは想像もできないくらい小悪魔に成長した友人兼恋人は、じゃあねー!と快活に笑って電話を切る。



「え、の、しまぁああああああああ!!!!!」

 暗くなったパネルを放り出し、参った!とばかりに天井を仰いで少年は吠えた。