かれらのはなし Theirs.


 まず最初に青年、いや少年と呼ぶほうがふさわしいのだろうか、四人の中から一人が去った。少年Cは宇宙人であったから、いつの日か訪れるであろう別れの日は仕方のないことでもあった。
 彼は夏が終わると同時に地球を去った。それは天気の良い日であり、笑顔で迎えた別れの日であったが、少しだけ寂しさがチクリと胸を刺すことは致し方のないことであった。彼は嵐のようにやってきて、事実、本当の嵐とともに自分たちの生活をかき乱し、そうして去っていった。彼と過ごした期間はそう長いものではなかったが、青年Aにとって、この少年はかけがえのない存在であった。
 彼のことを友達というのは、いささか首をかしげてしまうところがある。「友達になろう!」と、声をかけてきたわりには、世間一般で言う「友達」とはかけ離れた行動をしでかしてくれた。それでも、少年 が、その向こう見ずで常識破りの性格を持って、青年Aの家のドアをたやすくくぐりぬけてきてくれたことには感謝をしている。扉が開けられなかったら、四人はいつまでたっても一人一人のままであり、線が繋がることはなかったのだから。
 宇宙人の世界に恋があるのかは知らないけれど、でもきっと彼なら笑って言ってくれるのだろうと思う。「ユキ、良かったね!チョーシアワセそう!」

 そうして次に自らの責務へと戻っていったのは自分より八歳も年上の青年Dであった。彼との出会いも、少年Cに負けず劣らず奇妙で、そして今思えば滑稽なもの であった。青年Dと共に過ごした時間は、三人の中では最も短い。それでも同じくらい濃く、親密な時を過ごしたと思っている。
 青年Dは、だから、二十五歳であった。高校生の自分からしても、また世間一般からしても、それはもう大人のくくりに入るべき年齢であった。確かに彼は、大人相応の振舞いを見せた。ときにはその年齢以上の冷静さで事に対処する姿も見えた。それでも彼は結局のところ、自分たちと同じようなクソガキであったようにも思える。良い年をした大人がみっともない、と言われたとしたら、良い年をした大人なのに最高じゃないか、と返そう。
 高校生にとって、二十五歳というのは想像もつかない世界であった。今現在の自分すら把握できていない身で、八年先のことを考えることは、どだい無茶な話であった。
 青年Dはクソガキであったが、誰よりもやはり大人であった。彼は「責任」という言葉をきちんと認識している人間であった。そしてその「責任」という言葉に縋って逃げることに、真っ向から立ち向かった人間でもあった。
 秋が過ぎ去ると同時に、彼もまた江の島を去った。別れはあっさりとしたものであった。まぁ確かに、三人は既に少年との別れを済ませてしまっていたから、だから別れに慣れた面もあったのかも知れない。それから青年が、大人だったからかも知れない。その頃にはもう、青年二人は付き合っていたが、そのことに関して青年Dはただ一言、「やっとか。」と呟いただけであった。